FileMakerの有用性に着目できる人は、業務というもの、そしてITのことをとてもよく理解されているといえます。しかし世の中、なかなか一筋縄ではいかないもの。問題解決にFileMakerが適任だと思える案件において、妙な横槍が入ってしまうことはとてもよくある話です。
そんな事態に遭遇したとき、どうやって価値を主張したらいいのかを状況別に考えてみました。何かのご参考になれば幸いです。
単に「FileMakerというソフト」を支持しているわけじゃない
私自身、そして私のまわりには「FileMaker好き」といえる人が多数おります。こういったことを理解できない人に「好き」などと話すと、「ヤクルトファン」とか「千代大海ファン」とかと同列にとらえられたりして、ますます理解が得られなくなったりします。
私の考えをまず申しますと、別に「FileMakerというソフト」自体が気に入ってるというわけじゃないんです。
そうじゃなくて、さまざまな仕事において 「その業務専用のアプリケーションを手早く開発し、それを活用して業務効率を上げ、正確さも高める」 という部分がやりたいんです。だから、これが実現するならどんなソフトでもかまわないんです。
アプリケーションを手早く開発するっていう考えは、「RAD」(Rapid Application Development)という名前も付いており、業務遂行においてとても重要な概念と私は考えています。
Excelの代わりにFileMakerを使おう
この「RAD」の領域をカバーしているのは、多くの場合Excelです。Excelにデータを入れ、集計し、結果を求めるという作業は、世のほとんどの会社で行われていると言っても過言ではないでしょう。
しかしExcelでこうした処理を行うと、どうしてもコピー&ペースト等の手作業が増えます。さらに情報共有が難しいため、1つのファイルを複数の人で処理したい場合に、Aさんが作業してメールで送ってBさんが続きを始めたら、Aさんから「さっきの違ってたからこっち使って」と再送されてきて、でもBさん少し手をつけちゃったしどうしよう、みたいなことになってしまいます。
Excelでの作業は、どうしても属人的になりがちです。こうした部分をFileMaker化すると、作業時間を大幅に短縮でき、費用対効果の高い業務改善につながることが多いと言えます。
ITのプロがFileMakerを誤解している
よくある話として、現場からの声を集めてFileMakerでシステム開発をまさに開始しようとしたら、会社のシステム部や出入の業者から「FileMakerでその業務をやったら遅くて話にならないですよ」と横槍が入った、というのがあります。
じゃあその専門家の方は何らかの実証なり事例検証なりをしたかというと、それはまったくしていない。単なる印象で語っているのです。
FileMakerは、かつてのバージョン2.1あたりではパーソナルなデータベースとして売っていました。それが2004年のバージョン7においてまったく新しいソフトとして生まれ変わり、100名くらいの同時使用も、100万件くらいのデータ処理も、問題なくこなせるものになりました。1ファイルあたりのデータ上限も8TBと、努力しても到達するのは難しいほど、とにかく天井は高いのです。これはマイクロソフトAccessよりもかなり高性能です。
もちろん、1000名規模以上が同時使用するようなシステムでは、私もFileMakerはお勧めしません。しかし、印象だけで語る方の話を聞いてみると、ほんの10数名、数千件のデータで限界がくるんじゃないかと思い込んでいたりするので、これは事実誤認も甚だしいのです。
繰り返し申しますが、100名くらいまでの企業であれば、FileMakerで基幹システムを組むことは可能です。どのツールが良いかという点の判断要素はさまざまですが、FileMakerの処理能力はこのくらいは十分にこなせます。
データベース vs アプリケーション
Oracle等で基幹システムを持っているような、ある程度以上の規模の企業においてよく発生することとして、手作業で行っている業務処理をFileMakerで自動化しようとすると、「すでに基幹システムがあるんだから余計なものに予算は避けない」と横槍が入ることがあります。
これは、おもにデータを蓄積し共有することを主眼としたデータベースシステムと、特定の業務処理を効率化するためのクイックに開発されるアプリケーションとを、混同してしまっているのです。
かつてのIT化というものは、データを放り込んでおくことがなにより重要で、あとはそのデータを切り出してExcelで加工してレポートなり計算書なり作ってください、という流れになっていました。
そして「データを放り込んでおく」という部分が満たされたとき、次のステップとしての特定業務処理専用のアプリケーションが求められるわけです。しかし、前述の「RAD」にあたるこうしたアプリケーションのカテゴリーは、システムの専門家でもちゃんと理解していないことがあるのです。
パソコンに詳しい人ならITについてのあらゆるジャンルについて詳しく知っているというわけじゃないんです。
だから、もし自分が業務担当者としてFileMakerでの効率化を画策していて、システム系の人から横槍を入れられても、自信を持って対応しましょう。
FileMakerに着目する人=RADの有用性を認識している人
ということで、FileMakerに着目している人は、効率化・定型化、そして反属人化という点において、意識の高い人といえます。ITによって業務効率を本当にあげられる人は、こういう考えがわかる人です。
そしてFileMakerに着目した人は、別に「FileMakerというソフト」が特別気に入っているとかいうことではなく、要は「RAD」というものの価値を理解している人なのだと言えます。
RADを目指すツールは世にいくつかありますが、なかなかFileMakerのようにクイックに開発でき、手軽に共有でき、データベースエンジンとしての基本性能に優れたものはありません。たとえばマイクロソフトAccessでは、ややデータベースとしての基本性能において不足することがありますし、共有環境を手軽に構築することもできません。
FileMakerが本格的なRADツールとして使えるようになったのは、バージョン7が登場した2004年以降です。したがってまだまだ新しいジャンル、新しい概念なのです。新しいものへの頭の切り替えができない人にとっては、得体の知れないものと思われ抵抗にあってしまうのも、ある意味仕方ないのかもしれません。
FileMakerのことを正しく知ろう
FileMakerを使っている人たちの中でも、FileMakerにおけるデータベース構築のお作法や、FileMakerの本当の実力を知らないままの方は多数おります。たとえばFileMakerのプロを語るためには絶対に必須である「FileMaker認定デベロッパ」の資格を持っている人が、いまだにこんなに少ないことがそれを如実に示しています。
人様からお金をいただいて開発をしたり、人様にFileMakerを教えたりするなら、最低限でも「FileMaker認定デベロッパ」資格は取得しておいてほしいと私は思うのですが。FileMakerというソフトウェアについての正しい知識を得ていないとこの試験は受かりませんので、ひとつの基準となります。